モノトーンレトリック

缶詰のミカンが綺麗な理由【皮は溶かされていた⁉】

 

誰もが一度は食べたことがあるであろうミカンの缶詰。

普段剥くのが億劫な皮は綺麗に剥がされており、甘いシロップに浸かっているあの味が好きな人も多いのではないだろうか。

しかし疑問なのは、あの皮は、どうやってあそこまで綺麗に剥かれているのかということだ。

パートのお姉さま方が一つ一つ丁寧に剥いているのだろうか?
いや、そんなことをしていては時間がいくらあっても足りない。
なにより人件費がかかり過ぎてしまう。

では、機械ではどうだろうか
一つ一つ形の違うミカンの皮を身を傷つけないように剥き、細かい薄皮すら欠片も残さず剥がしていく高性能な機械。
不可能だ。
そもそもそんな超スペックな機械を使用していては、あんなお手頃な値段でミカンの缶詰は市場に出ることはないだろう。

では一体どうやってあそこまで綺麗に皮の剥かれたミカンを量産しているのだろうか。
その疑問について、これから3段階に分けて説明していこうと思う。

 

 

1段階目 外側の皮を剥く

サイズ別に分けられて工場に送られてきたミカンはまず、蒸気を当てることで外側の皮をふやけさせている。
そうすることで柔らかくなった皮を、まずは機械を使って大まかに剥がしていく。
しかし、所詮は機械、柔らかくなった外側の皮とはいえ、完全に剥くことは難しい。
そのため、若干残ってしまう皮は、人の手を使い丁寧に剥いていく。f:id:mono_tone_reversi:20171130140635p:plain

2段階目 ミカンを一つ一つに分解

2段階目では外側の皮が剥かれたミカンを一つ一つの房に分解していく。
しかし、これを人の手を使ってやると莫大な時間がかかってしまう。
そのため、これも機械を使って行うことになる。
蒸気を当てられ外側の皮が剥かれたミカンは分解しやすい状態となっているため、それを水の勢いを使って押し出し、円錐を逆さにしたような形で張られたゴムの糸を通すことにより、ミカンの房を一つ一つに分解しているのだ。f:id:mono_tone_reversi:20171130140906p:plain

3段階目 薄皮を溶かす

かなり完成品に近づいてきたミカンだが、まだ最大の難関が残っている。
そう、ミカンの表面についているミカンの薄皮だ。
こればかりは、機械で綺麗に取ることもできず、人力で剥くにしても時間がかかり過ぎてしまう。
ここでついに化学の出番である。
実は、ミカンの薄皮は、化学薬品を使って溶かされているのだ。
使われているのは塩酸と水酸化ナトリウム水溶液である。
始めに塩酸を使ってミカンを洗い、次に水酸化ナトリウム水溶液を使って洗うことで、ミカンの薄皮だけが魔法のように綺麗に剥がれてしまう。
もちろん、そのまま出荷することはできないため、水を使い、薬品は綺麗に洗い落とされる。
最後に缶に入れ、甘いシロップに浸けたら出来上がりだ。f:id:mono_tone_reversi:20171130141154p:plain

 まとめ

このように、最初は機械や人の手を使い、最終的には薬品で洗うことでミカンの薄皮は綺麗に剥がすことができる。
ここで疑問なのは、そんな薬品を使って体に影響は無いのかということだ。


結論から言えば、体に影響が出ることはありえないだろう。

薬品とは言っても、薄皮だけを溶かすために非常に薄い濃度に調整されたものであり、
使用した後には水を使って丁寧に薬品を洗い流している。
化学薬品の名前だけを聞いて警戒を覚えてしまう人もいるだろうが、そもそも人間の胃から分泌されているのが塩酸であり、水酸化ナトリウムも、固形石鹸の製造に使われたりと、どちらも身近に存在しているものなのだ。
もちろん、どちらの薬品も扱いを間違えれば危険なものであることに変わりはない。

しかし、さきほど説明した通り、ミカンの薄皮を溶かすのに用いられているのは調整された非常に薄い濃度のものである。(胃液の方がずっと濃度が濃い)
その上で時間をかけて水で綺麗に洗い流しているのだから、人体への影響は無いと断言してしまっていいだろう。


このようにして、食べ物の製造などには、時に驚くような手法が使われている事も少なくない。けれど忘れないで欲しいのは、市場に出ている商品というのは、国が指定した安全の基準をきちんとクリアしているということだ。
やり方に驚いた人もいるだろうが、これらはきちんと安全性が保障されているやり方なのである。


これからも安心して、ミカンの缶詰を楽しもう!!

 

Writing by 黒